バイオフォトニクス研究クラスターbiophotonics


光やレーザーを活用して医療の現場につながる研究を進め、成果を社会へ還元

教授・博士(工学)李 黎明

■専門分野バイオメディカルフォトニクス、光線力学的癌診断・治療、フェトム秒光パルスの発生・計測と応用

■中国復旦大学電子工学部電子工学専攻卒業

■慶應義塾大学大学院理工学研究科学位(博士)取得

■所属学会日本レーザー医学会、日本生体医工学学会、日本バイオイメージング 学会、日本光線力学学会、日本レーザー学会、日本内視鏡外科学会、応用物理学会

胃がん転移診断用レーザー製品化・臨床試験開始へ

 レーザーを使ったがんの診断・治療を中心に、胆石の治療の研究など、バイオメディカルフォトニクス(※1)を柱にした研究に取り組んでいます。

※1「バイオメディカルフォトニクス」生体医用光学。光やレーザーの技術を医学・バイオに応用する分野

私がこのシステムの研究を始めるきっかけは、ある病院の外科医師から「年間100例以上の胃がん手術を執刀しているが、胃を切除した患者のうち6割は検査の結果、転移していない。開腹手術をする前に転移の有無が分かれば、患者の負担を大きく減らせる。」という相談を受けたことでした。
 
胃がんと診断された患者さんは通常、転移を防ぐために開腹して胃の半分以上切除する手術をします。そうすると、術後に以下のような状況に陥る方がいます。
 
・術後初めは食事が取れず、痛みも伴う。
・入院が長期入院となる。
・退院後に状況が良くならず、再入院してしまう。
 
上記のような状況は、高齢者の場合は体力的にも特に大変です。
 
今回、当研究クラスターが考案したシステムは、北大病院などと研究、開発を進めてきた「胃がんSLNリンパ節診断用近赤外線蛍光画像腹腔鏡システム」で、がんが最初に転移するリンパ節だけを腹腔鏡で摘出し、開腹手術なしで転移の有無を検査することができるものです。
レーザーは半導体LDレーザーを使用しております。このレーザーは150ミリワットの手を当てても温度があまり感じないものなので、熱効果で余計な部分まで焼いてしまうことはありません。患者さんに発光物質を投与した後、胃の外側から腹腔鏡でレーザーを照射し、発光物質の反応を映像と波形グラフで映し出すことで、リンパ節の位置を特定します。転移がなければ、がんのある部分だけを腹腔鏡で摘出するだけでよく、患者の苦痛を最小限にとどめ、手術費用も抑えることができます。
そしてついに、「胃がんSLNリンパ節診断用近赤外線蛍光画像腹腔鏡システム」が、製品化に向けて動き出しました。
現在、民間企業と契約を結び、共同で製品開発を行っています。
 
ここまでの道のりは長く険しく大変でしたが、実際に社会で役立つものでなければという強い思いでここまでやってきました。この技術を一日でも早く医師、特に患者さんに使用し、社会で役立つものになってもらいたいと思います。


 

フェムト秒超短光パルスを用いた胆石、骨などの治療

 フェムト秒超短光パルス(※2)の研究も行っています。フェムト秒超短光パルスを使えば胆石・骨などの治療も可能と考えています。
日本では60歳以上で約14%の人が胆石を患っています。この手術をすると大きな傷跡が残るのが問題です。衝撃波で石を砕く治療法もありますが、これだと石は小さくなるものの、鋭い破片状となり、流れる際に胆管を傷つけるので痛みが避けられません。
それに、こういう体質の人はまた石が大きくなることが少なくないのです。
そこで私が今、研究しているのは超短光パルスで石の分子と分子の結合を切る方法です。うまくできれば粉末にして流せます。最も有効な光源やファイバなど課題はまだ山ほどありますが、その対策もいろいろ考え、今は実験に協力していただける会社を検討中です。
 
 私たちの研究は医療現場と密接につながっています。寿命がどんどん長くなる今後の社会では、生命医学、医療分野はさらに重要になります。がんになっても怖くない、治療して楽しく生きていくことができるようにしたいという夢を私は持っています。ぜひ医療機器関連の開発を行なう企業様にもご協力頂きたいと考えています。この研究を社会に還元し、多くの人の生命(いのち)を救いたいと思っています。
 

※2「フェムト秒超短光パルス」1,000兆分の1秒という非常に短いパルス。2001年に北海道大学との共同研究で世界最短(当時)のパルスの計測に成功しています


新しい光技術の実用化に向けて、当研究クラスターと手を取り合い、共に研究開発を行って頂ける企業様、また、関心・興味のある企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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